この授業は労働組合論入門であり、連帯社会を構成する主要な柱の1つである労働組合の起源と基本的役割について学ぶ。
労働組合はイギリスで17世紀の末から18世紀初めにかけて誕生したが、その存在が法的に認められるまでには長い年月を必要とした。この授業では、最初に、働く人々が団結しようとしたのはなぜか、法認されるまでに時間がかかったのはなぜかを歴史的に学ぶ。その上で、労働組合が職場でどのような役割を果たしているのか、社会の中でどのような役割を果たしているのか、また果たすべきなのかを学ぶ。この授業を履修することによって、労働組合についての基礎的な知識を獲得することができる。
労働者が団結する自由がどのような経緯と論理で認められるようになったのかを、主として18世紀、19世紀イギリスの歴史を素材に論じる。
第二次世界大戦前の日本では労働組合は法律的には厳しい制約の下に置かれていた。そうした厳しい環境の下であっても労働組合は結成されたし、活動も行った。その歴史を振り返る。
労働組合の結成と活動を事実上、否定した戦前の法的な枠組みは、戦後制定された労働組合法によって大きく変えられた。どのような論理で労働組合を法認することになったのかを論じる。その上で労働組合の法認の意味と意義を述べる。
労働組合は組織原理の違いによって、職業別組合、産業別組合、一般組合という諸類型がある。他方、日本の労働組合の基本はこれらとは異なる企業別組合である。これらの違いを論じたあと、企業別組合の組織上、機能上の諸特徴を論じる。
ミクロ経済学で使われる概念を簡単に説明した後に、古典派経済学、現在の一般的なミクロ経済学は労働組合をどう捉えているのかを説明する。
「退出か発言か」(Exit or Voice)という2つの選択行動から労働組合を論じる新しい理論、集団的発言メカニズムの理論を詳しく説明する。
Exit or Voiceという新しいモデルに基づく実証研究(アメリカの研究)を詳細に紹介する。
日本の労働組合の効果についての実証研究を紹介し、かつ日本の企業別組合に対する新しい見方を論じる。
この授業は労働組合論応用編であり、日本の労働組合の行動原理と直面している諸課題について学び、対策を考える。
現代の日本の労働組合の行動原理を理解し、労働組合が直面している諸課題にどう対応すべきかを考案できることを目指す。
戦後に成立した労働組合の多くは企業別組合であった。その特徴がどのように発見されたのかを学び、企業別組合の存立基盤を明らかにする。
日本の労働者、労働組合の行動規範としての「能力主義」をとりあげ、それが戦後、どのような形で定着していったかを論じ、その制度的表現ともいうべき職能資格制度について明らかにする。
日本の労働者がいかに働いているかを仕事管理という視点から明らかにし、それが企業別組合の機能上、行動上の特徴といかに関係するかを論じる。
製造業における作業組織の編成原理を「分離に基づく統合」と規定し、その特徴と形成過程を論じる。その上で、「分離に基づく統合」によって編成される作業組織を具体的に明らかにする。
ホワイトカラーのキャリアと仕事管理の仕組みの実態を具体的に明らかにする。
日本が抱える大きな労働問題の1つである長時間労働の実態を明らかにし、それに労働組合はどう立ち向かうべきかを論じる。
この授業では、地域で市民の暮らしを支える労働組合の地域組織、労働者福祉協議会に焦点を当て、活動理念、活動内容を具体的に学ぶ。社会運動としたのは労働組合運動だけではなく、協同組合運動、市民による運動をも視野に入れるからである。
連帯社会を構成する主要な柱の1つである労働組合の地域社会における役割を理解する。この授業を履修することによって、連帯社会を築き上げていくため、労働組合として何ができるか、何をすべきか、NPOや協同組合など他の組織とどのような連携がはかれるか、はかるべきかについて、自分なりの考えを持つことができるようになる。
自助、公助、共助、そして他助という4つの「助」をうまく組み合わせることによって互いに助け合う連帯社会を構築できるのではないかという問題関心を述べた後、本講義の目的について述べる。
地域社会運動を担う重要な主体の一つである労働組合の地方組織改革について論じる。連合評価委員会報告が地方連合会役員に与えた衝撃についても触れる。
地方連合会の組織と活動について論じる。地方連合会の事例研究と連合総研『地方連合会・地域協議会の組織と活動に関する調査研究報告書』を素材に、具体的に明らかにする。
地域協議会改革の経緯を論じた後、それがどのような成果を生んでいるのかを明らかにする。地域協議会に関する事例研究『地域から変える』と連合総研上記調査を素材に、具体的に明らかにする。
労働組合、協同組合をつなぐ重要な組織である労働者福祉中央協議会(中央労福協)を とりあげ、その沿革と現状について論じる。
都道府県労福協が地域社会に対して行っている新たな試みとその可能性について、まず沖縄労福協の取組を紹介する。DVDと講義。中村圭介『連帯社会の可能性』(全労済協会、2019年)を素材に明らかにする。
茨城県労福協、静岡県労福協、山形県労福居、徳島県労福協という4つの異なるタイプの取組を紹介する。中村圭介『連帯社会の可能性』(全労済協会、2019年)を素材にする。
この授業では産業別組織とナショナル・センターの活動内容、役割を具体的に学ぶ。
周知のごとく日本の労働組合の基本は企業別組合である。だが、働く人々のために活躍するのは企業別組合だけではない。地方連合会、地域協議会などの地域組織もあるし、また産業別組織、さらにはナショナル・センターもある。労働条件闘争、組織化活動、調査活動、政策制度要求など多くの分野で産業別組織、ナショナル・センターは独自の役割を担っており、それらを具体的に学ぶことが本授業の目標である。この授業を履修することによって、日本の労働組合運動の全体像を把握することができるようになる。
この講義で論ずべきテーマについて論じる。その上で、産業別組織、ナショナル・センターの組織状況について明らかにする。
産業別組織を組織範囲、市場占有率、組合員規模で類型化する。それぞれが行っている諸活動について、その内容を具体的に比較しつつ論じる。
春闘の歴史を具体的に明らかにし、現状をどう見るべきかを論ずる。その上で、現在、労働組合に投げかけられている課題を論じる。
組織率低下の背景を分析し、産業別組織による組織化活動の実態をアンケート調査と、UAゼンセンについての事例研究によって明らかにする。
*産業別組織の実務家による講義
JAM、JCM、電機連合、UAゼンセンの実務家による講義
「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、連合がどのような政策参加を行い、いかなる成果をあげつつあるかを論じる。
2023年3月22日に法政大学ボアソナードタワー スカイホールで行った最終講義。