私の主張

労働時間は短くなっていくのか?(2)-電機連合と自動車総連

Assertion
中村圭介
2024.8.23

5.電機産業-電機連合

5-1.年間総実労働時間

 電機連合の労働時間に関するデータには直加盟組合と直加盟組合(一括加盟構成組合を含む)の二種類がある。直加盟組合とは労連単位(日立グループ連合、パナソニックグループ労連など)で加盟する組合を1組合と数え、それに単組単位で加盟する組合を足し合わせたカテゴリーである。直加盟組合(一括加盟構成組合を含む)とは、労連を構成する各単組を1組合と数え、それと単組単位で加盟する組合を足し合わせたカテゴリーである。2023年6月現在で、前者は178組合、後者は550組合である。この論文では、後者の直加盟組合(一括加盟構成組合を含む)のデータ「労働時間関係調査結果」を利用する。  表18は2013年から2022年までの平均年間総実労働時間数(実績値)の推移である。この表から2018年、2019年が一つの画期であることが読み取れる。2013年から2016年までは年間総実労働時間数は規模にかかわらず増加傾向にある。ところが、2017年は前年実績をいずれの規模でも下回り、2018年ではさらに減る。2019年、2020年ではおそらくコロナ禍の影響であろう、いずれの規模でも2000時間を下回る。2021年、2022年には年間総実労働時間数はやや増えているが、2017年以前をはるかに下回る。2013年と比べると2020時間から1995時間へと大きく減っている。これらの点は規模にかかわらずあてはまる。

表18 平均年間総実労働時間(実績値)
組合員規模別 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
合計 2019.5 2036.2 2036.3 2039.2 2024.4 2010.7 1985.7 1980.6 2004.5 1994.9
3,000人以上 2020.6 2033.7 2031.4 2034.2 2022.3 2007.4 1985.3 1986.3 2009.5 2001.4
1,000-2,999人 2016.0 2052.6 2053.5 2047.9 2028.6 2026.3 1996.8 1979.0 2014.6 1996.6
500-999人 2027.9 2015.6 2041.6 2051.7 2018.1 1994.6 1974.8 1972.2 1982.0 1971.8
300-499人 2026.3 2038.4 2039.7 2051.2 2038.1 2018.4 1975.0 1961.3 1989.2 1982.1
299人以下 1997.7 2014.7 2005.0 2024.1 2022.9 2006.0 1973.5 1953.8 1954.9 1958.3

 図3は平均年間総労働時間数(規模計)の推移を図示したものであるが、この図からも2018年、2019年が一つの画期であることをはっきりと読み取ることができる。

図3 平均年間総実労働時間数(実績値)-規模計
平均年間総実労働時間数(実績値)

 この点をさらに確かめるために、表19で平均年間総実労働時間数が最も多かった2016年と2022年の分布を比較してみよう。

表19 年間総実労働時間数の分布-2016年と2022年

組合員規模別 1900時間未満 2000時間以下 2000時間超 組合数
2016年度 合計 10.9 25.1 64.0 403
3,000人以上 2.9 29.4 67.6 34
1,000-2,999人 4.4 25.0 70.6 68
500-999人 13.1 9.8 77.0 61
300-499人 6.8 25.4 67.8 59
299人以下 15.5 29.3 55.2 181
2022年度 合計 22.8 37.3 39.9 391
3,000人以上 10.5 34.2 55.3 38
1,000-2,999人 12.1 44.8 43.1 58
500-999人 24.6 33.8 41.5 65
300-499人 9.8 50.8 39.3 61
299人以下 33.1 32.0 34.9 169

 いずれの規模においても、2000時間超が1割以上減り(3,000人以上を除けば減少幅は2割)、2,000時間以下が半分弱あるいはそれ以上となっている(3,000人以上だけは4.5割だが、それ以外は過半数を占める)。

5-2.労働時間制度

 以上の年間総実労働時間数の減少をもたらしたものを探っていこう。1日あたりの所定労働時間、週休2日制、週休日を含めた休日数、年間所定労働時間(協約)をみよう。
 表20は1日当たり所定労働時間の推移を示したものである。この10年間、大きな変化は見られず、7時間45分が2/3、8時間が2割弱となっている。

表20 1日当たり所定労働時間

7:30 7:35 7:40 7:45 7:50 7:55 8:00 その他 組合数
2014 2.7 3.6 63.9 5.8 3.9 19.0 1.2 415
2015 2.8 3.3 64.9 4.2 4.0 19.6 1.2 424
2016 2.9 3.1 65.1 3.8 4.7 19.7 0.7 447
2017 2.7 0.4 3.3 64.5 3.9 4.7 20.1 0.4 488
2018 2.4 0.4 3.2 65.3 4.5 4.7 18.8 0.8 464
2019 2.8 0.4 3.4 66.0 4.3 4.3 18.4 0.4 467
2020 3.3 0.4 2.9 65.6 3.9 4.3 19.1 0.8 488
2021 3.4 0.4 2.8 64.3 4.0 4.0 19.7 0.8 497
2022 3.9 0.4 2.9 66.0 3.9 3.7 18.1 1.0 486
2023 3.4 0.5 2.7 65.8 3.4 4.1 18.7 1.4 439

 次に週休2日制を見よう。調査対象組合のうち、カレンダー協定を締結しているのは8割程度である。電機連合が定義する完全週休2日制という概念があり、その定義によると、①土曜日、日曜日が休日、②国民の祝日が休日、③祝日法にいう休日(国民の祝日が日曜日にあたるときはその日以降の最も近い平日、国民の祝日に挟まれた平日)が休日、④メーデーが休日となる。なお、③の「国民の祝日に挟まれた平日」とは、秋分の日(9月23日か22日)が水曜日になった年で、9月の第3月曜日(敬老の日)との間の火曜日のことを指す。
 この定義によると、普通に考えて、土日が104日、祝日が16日、メーデーが1日なので、土曜日と祝日が重ならない場合は121日、重なる場合は(「労働時間は短くなっていくのか?(1)-労働経済白書とJAM」の表5で見たように、祝日と重なる土曜日を除くと、2013年以降は、2019年は別とすれば、12日から15日になる)117日から120日になる。
 電機連合の定義する完全週休2日制がどの程度、普及しているのかをみよう。表21は2014年度から2020年度までのデータであるが、これによると、だいたい7割から8割の組合が完全週休2日制を採用していて、年による変化が若干あるが、傾向的な変化は見られない。

表21 完全週休2日制の普及状況
組合員規模別 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
合計 80.7 79.6 80.6 73.7 73.5 79.1 79.8
3,000人以上 84.0 87.5 88.0 84.0 80.0 84.6 85.7
1,000-2,999人 81.0 82.6 85.1 84.9 83.6 83.1 84.7
500-999人 89.1 92.4 93.4 83.1 79.7 89.5 85.7
300-499人 85.7 88.2 83.1 78.0 76.3 76.9 79.2
299人以下 75.3 69.9 72.6 63.4 65.6 73.5 75.3

 2021年度以降は、この定義にいう「完全週休2日制」という項目はなくなり、土曜日、日曜日、祝日、祝日法による休日など個々の項目ごとに休日かどうかをたずねるようになった。「完全週休2日制」の定義に近いと推定される「④メーデーが休日」だとする組合の割合を示したのが表22であるが1、さほど違いはみられず、2021年以降、傾向的に変化があるともみえない。

表22 メーデーが休日
組合員規模別 2021 2022 2023
合計 78.4 74.9 78.5
3,000人以上 96.5 93.5 93.5
1,000-2,999人 89.3 84.9 84.9
500-999人 85.0 84.3 84.5
300-499人 71.2 69.6 80.0
299人以下 71.3 66.0 69.9

 次に年間休日数をみよう。休日についても、電機連合には一定の方針があり、産業別組織としては次の日を休日とするよう加盟組合に促している(カレンダー協定を締結している組合)。①土曜日、日曜日、②国民の祝日、③祝日法による休日(国民の祝日が日曜日にあたるときは、その日以降の最も近い平日。国民の祝日に挟まれた平日)、④メーデー。ここまでは、前出の電機連合の「完全週休2日制」の定義と重なる。これにプラスして⑤国民の祝日(元日を除く)が土曜日と重なるときの前日の金曜日または他の平日、⑥年末年始(12月31日、1月2日、3日)、⑦特別休日2日も休日とする。最後の特別休日は、おそらくは夏季休暇だと思われる。この方針によると、電機連合が方針として掲げる年間休日数は、原則として、104日(土日)+16日(祝日)+1日(メーデー)+3日(年末年始休暇)+2日(夏季休暇)=126日となる。
 実際にはどうか?表23は休日数の分布をみたものである。2020年度から区切りが変更になったため(電機連合の方針として年間休日数124日以上を掲げたため)、2014年から2019年までをこの表では掲げている。2016年の数値がおかしいと思われるのだが、その真偽はわからない2。2016年を除いて見ると、2018年、19年から年間休日数が125日以上の組合が増えてきたようにみえるが、次の表24と合わせてみると(年間休日数のバラツキが意外に大きい)、確かなことは言えない。

表23 年間休日数の分布(1)-2014年から2019年

125日以上 120-124日 119日以下 組合数
2014 59.3 33.5 7.1 415
2015 63.2 29.5 7.3 424
2016 32.2 59.7 8.0 447
2017 66.2 26.0 7.7 488
2018 70.7 23.3 6.1 464
2019 79.7 15.2 5.1 467

 表24は年間休日数についてのもう1つの表である。表23と2つの点で異なる。

表24 年間休日数の分布(2)-2018年から2023年

平均 124日以上 120日-123日 119日以下 組合数
2018 124.7 75.1 18.4 6.5 414
2019 126.5 84.3 10.8 4.9 426
2020 124.5 76.9 17.6 5.5 454
2021 123.8 71.0 22.7 6.4 472
2022 123.8 66.9 28.2 4.9 468
2023 126.1 83.4 13.2 3.4 440

 1つには平均年間休日数が示されている。2つにはカテゴリーが異なる。「125日以上」が「124日以上」になり、「120日-124日」が「120日-123日」になっている。この6年間では平均年間休日は124日弱から126日強で変動し、「124日以上」も2/3から8割強と変動していて、何らかの傾向を読み取ることはできない。
 ただ、電機連合のデータで注意しておくべきことは、年間休日数の多さである。「労働時間は短くなっていくのか?(1)-労働経済白書とJAM」の表10にあるように、JAMでは2023年で規模計で平均年間休日日数は119.8日、300人以上で123.0日であり3、電機連合加盟組合の休日数は多いことがわかる。さらに、後述の自動車総連に比べても多い。
 最後に、表25で年間休日を除いた平均年間所定労働時間数(協約)の推移をみよう。

表25 平均年間所定労働時間数(協約)  時間:分
組合員規模別 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
合計 1876:26 1878:52 1881:55 1875:58 1871:37 1866:50 1874:24 1879:19 1878:02 1870:34
3,000人以上 1865:38 1871:38 1876:29 1865:04 1866:05 1863:10 1867:18 1871:49 1872:56 1862:03
1,000-2,999人 1870:27 1874:29 1872:46 1863:02 1863:13 1854:15 1864:37 1871:57 1873:12 1861:39
500-999人 1874:43 1874:07 1876:23 1886:48 1863:59 1858:33 1870:38 1872:25 1872:18 1863:38
300-499人 1875:37 1873:15 1883:04 1873:23 1872:29 1869:38 1876:58 1877:55 1879:39 1868:49
299人以下 1880:48 1885:39 1887:20 1885:40 1877:34 1873:15 1878:50 1885:05 1881:50 1878:08

 この表から、年間所定労働時間数(協約)がこの10年間に大きく変わったこと、とりわけ減少してきたようなことを読み取ることはできない。

5-3.有給休暇取得日数

 有給休暇の取得日数(実績値)の推移を表26でみよう。

表26 平均有給休暇取得日数(実績値)
組合員規模別 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
合計 14.0 14.4 15.0 15.2 15.4 15.8 16.2 15.1 15.7 16.8
3,000人以上 14.6 15.0 15.6 15.9 16.0 16.2 16.8 15.5 16.1 17.0
1,000-2,999人 13.7 13.8 14.8 14.7 14.9 15.8 15.9 14.5 15.1 16.6
500-999人 13.0 13.7 14.0 14.3 14.7 15.2 15.6 14.6 15.6 16.3
300-499人 13.0 13.2 14.0 13.8 13.8 14.2 14.8 14.1 15.1 16.4
299人以下 12.7 12.9 13.5 13.3 13.9 14.1 14.7 13.8 14.4 16.1

 これによると、トレンドとして有給休暇取得日数は増加しているとみることができる。とりわけ、2018年、2019年が画期となっていそうである。ただ、2020年は取得日数が落ち込んでいるが、コロナ禍の影響ではないだろうか。たとえば、在宅勤務が増えたために、有給休暇の取得が結果として減ったことなどが考えられる。有給休暇取得日数の増加トレンドは規模にかかわらず読み取ることができる。
 この点をさらに確かめてみるために、規模計の推移を図示し、さらにトレンドを回帰分析によって推計してみよう。

図4 平均有給休暇取得日数(実績値)-規模計
平均有給休暇取得日数(実績値)-規模計

注)トレンドの係数のt値は4.613である。

 有給休暇取得日数の増加トレンドは、回帰分析の結果も含めて、図4でよりはっきりとみることができる。

5-4.年間所定外労働時間

 最後に平均年間所定労働時間数(実績値)の推移をみていこう。図27によると、年間所定外労働時間は2019年を画期として減少傾向にあることがわかる。2019年には年間260時間を割り、2021年、2022年は若干、増えているものの、2018年以前と比べれば20時間以上も少ない。この傾向は規模にかかわらず当てはまる。

表27 年間所定外労働時間(実績値)
組合員規模別 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
合計 269.8 284.9 285.2 287.4 281.4 274.2 258.0 233.6 255.9 253.7
3,000人以上 280.1 294.0 288.0 291.7 286.7 275.7 264.2 245.3 266.1 263.2
1,000-2,999人 261.8 289.3 297.1 286.9 280.9 288.7 265.3 227.4 257.6 251.0
500-999人 256.4 245.7 274.5 291.8 270.8 253.3 237.9 216.8 235.7 229.3
300-499人 247.1 262.3 269.6 272.1 266.6 259.3 226.3 203.8 228.5 236.0
299人以下 216.9 234.9 233.3 246.4 257.1 247.7 219.4 183.3 194.7 202.1

 ここでも前節と同じく、規模計の推移を図示し、トレンドを推計してみよう。年間所定外労働時間の減少傾向は、トレンドも含めて、図5でよりはっきりとみることができる。

図5 平均年間所定労働時間数(実績値)-規模計
平均年間所定労働時間数(実績値)-規模計

注)トレンドの係数のt値は-3.004である。

5-5.要約

 以上、電機連合の「労働時間関係調査結果」を利用して、電機産業におけるこの10年間の労働時間の推移をみてきた。わかった点は次のようである。
 年間総実労働時間数は2018年、2019年を画期として、大きく減り始めた。この10年間でおよそ35時間少なくなっている。年間総労働時間数が2000時間を超える組合は2/3弱から4割へと減った(3,000人以上は2/3から5.5割へ)。
 この減少は次の変化がもたらした。第1に、有給休暇取得日数が増えた。14日から16日強へと傾向的に増えつつある。10年前に比べて2.8日多くなっている。第2に、年間所定外労働時間数が減った。この10年間で20時間以上である。
 電機連合で留意すべきは休日数増加への取組である。電機連合の定義する完全週休2日制は①土曜日、日曜日、②国民の祝日、③祝日法にいう休日、④メーデーを休日とするもので、カレンダー協定を締結している8割の組合のうち8割程度が、この完全週休2日制を採用している。また、年間休日数の方針も定められていて、上記4つの週休日に、祝日が土曜日と重なったときの振替、年末年始3日、特別休暇2日(おそらくは夏季休暇)を加えた126日を年間休日とするというものである。完全週休2日制の採用状況、年間休日の日数などについて、この10年間で、とくに大きな変化はみられないが、そもそも、他の産業別組織と比べると、多い。
 以上の数字から見ると、電機産業においても、2019年は長時間労働是正に向かう一つの転機だと言っていいのかもしれない。

6.自動車産業-自動車総連

6-1.年間総実労働時間

 表28は2013年から2022年までの平均年間総実労働時間(実績値)の推移である。この表から、2019年が労働時間減少の画期であることが読み取れる。2013年から2018年までの年間総実労働時間は2,100時間を超えているが、2019年にはそれを50時間以上、下回った。2022年にやや増えているが、それでも2018年以前と比べればはるかに少ない。年間総実労働時間の減少トレンドは続いているとみてよい。部門別にみても同じことがあてはまる。とはいえ、輸送の年間総実労働時間は他部門に比べて、依然として100時間以上多い。

表28 平均年間総実労働時間(実績値)
部門名 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
全体 2107 2113 2125 2128.2 2141.1 2105.2 2053.8 2019.5 2017.1 2026.8
メーカー 2063 2105 2072 2065.9 2072.0 2045.2 1992.0 1903.8 1935.2 2005.5
車体・部品 2126 2169 2168 2171.8 2176.9 2135.3 2047.0 2018.2 2013.6 2033.7
販売 2108 2108 2108 2097.1 2099.6 2078.8 2057.2 2012.8 2016.5 2014.5
輸送 2403 2393 2393 2390.9 2514.7 2430.2 2248.5 2317.0 2169.7 2187.5
一般 2108 2144 2144 2137.7 2137.4 2045.9 1999.4 2003.4 1996.8 2022.6

 図5は合計とメーカーに限って、年間総実労働時間の推移を示したものである。

図5 平均年間総労働時間(実績値)-合計とメーカー
平均年間所定労働時間数(実績値)-規模計

この図からも2019年が画期であることが読み取れる。

6-2.労働時間制度

 以上の年間総実労働時間の減少をもたらしたものを探っていこう。表29は年間所定労働時間(協約)の推移を示している。これによると、この10年間、ほとんど変わらない。わずかに、輸送部門の年間所定労働時間が年ごとに変動しているが、これが何によるのかはわからない。いずれにしても、この10年間で、減少しているような傾向はまったくみられない。

表29 年間所定労働時間(協約)
部門名 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
全体 1954 1946 1947 1942.0 1941.8 1945.2 1945.3 1944.5 1943.5 1941.2
メーカー 1938 1940 1938 1934.8 1940.6 1940.4 1940.6 1937.9 1937.5 1937.9
車体・部品 1946 1946 1946 1943.9 1944.4 1946.0 1946.0 1946.3 1946.3 1945.3
販売 1946 1941 1945 1944.0 1936.2 1940.8 1940.8 1940.1 1937.0 1933.9
輸送 2011 2006 2014 2016.7 2006.6 2007.9 2007.9 1993.6 2007.0 1996.8
一般 1951 1954 1946 1949.4 1946.2 1952.0 1952.0 1952.0 1952.0 1951.5

 次に年間休日数の推移を表30でみよう。この表によれば、この10年間で年間休日数にはあまり変化はみられない。とりわけ、メーカー、車体・部品では変化がみられない。わずかに販売がやや増加しているようにみえる。

表30 平均年間休日数
部門名 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
全体 112.0 112.0 109.5 109.0 111.9 112.7 114.0 112.7 113.7 114.3
メーカー 121.0 121.2 121.5 121.1 121.0 121.2 121.4 121.0 120.9 121.0
車体・部品 119.8 119.8 112.9 111.7 117.9 119.9 120.0 117.9 120.0 119.9
販売 106.4 106.3 106.6 106.8 107.6 107.6 108.3 108.8 109.2 109.9
輸送 111.7 112.0 107.2 111.0 111.6 111.7 111.2 112.3 112.2 113.4
一般 114.9 115.4 111.5 109.9 112.9 116.5 115.1 114.7 116.0 117.6

 メーカーの労働組合は、会社側と労働時間に関する協定を締結しているが、そこでは原則、年間労働日は244日、年間所定労働時間は1952時間と定められている(1日当たり所定労働時間は8時間が多数派だが、8時間未満の組合もあり、その場合は年間労働日数が244日であっても、年間所定労働時間は1952時間より少なくなる)。年間労働日が244日ということは、通常の年では年間休日は121日となる。他の部門ではこうした協定を締結していないようだが、年間休日数は、2022年の時点で、車体・部品が119.9日、販売が109.9日、輸送が113.4日、一般が116.0である。前節でも述べたように、JAMでは2023年で規模計で平均年間休日数は119.8日、300人以上で123.0日、電機連合は2018年から2023年の6年間では124日から126日であることと比較すると、自動車総連の年間休日数は、少ない。
 あるメーカーの労働協約で年間の労働日数、休日数について次のように書かれている。
「年間(当年4月1日から翌年3月31日まで)の休日数は、暦日数より年間所定労働日数244日を差し引いた日数とする。
 なお、休日は原則として次の中から設定する。
①日曜日
②土曜日
③国民の祝日
④日曜日にあたる国民の祝日の翌日
⑤メーデー(5月1日)
⑥夏季休日(1日)
⑦年末年始(12月31日から1月4日まで)
⑧その他、会社と組合が協議して決めた日」

 この協約の微妙なところは「休日は原則として次の中から設定する」という文章である。次の日を「休日」にするとは書かれていない。⑧は別として、①から⑦までの日数を計算すると基本的には次のようになる。①と②を合わせて104日、③と④で16日マイナスα(土曜日が祝日の場合は振替休日はない)、⑤は1日、⑥は1日、⑦は4日(1月1日は祝日なので③に含まれる)、合計すると、126日マイナスαとなる。前節で述べたように、土曜日と祝日の重なりを除くと、2013年以降の祝日の休日は12日から16日になるので、αは最大が4日となり、年間休日数は122日から126日となる。
 他方、協約には休日は121日とすると明記されているので、差の1日から5日はどこかに消えてしまっている。休日数が明記されていない①~④からその分が差し引かれていると考えられよう。

6-3.有給休暇取得日数

 表31で、有給休暇取得日数の推移をみよう。トレンドとして増加傾向はみられるが、2019年を境に取得日数が増えたことがわかる。7、8日から11日、12日へと大きく増えた。部門にかかわらず、このことがあてはまる。とりわけメーカーでの取得日数は多い。これに対し販売部門の取得日数は他部門と比べてかなり少ない。

表31 平均有給休暇取得日数(実績値)
部門名 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
全体 6.9 7.3 7.3 7.9 8.0 8.5 10.4 10.0 11.1 12.2
メーカー 16.1 16.8 16.8 16.8 16.5 17.4 18.0 17.8 18.1 18.4
車体・部品 10.5 11.0 11.7 11.7 11.2 12.0 13.1 12.2 13.4 14.2
販売 3.7 4.0 3.9 3.9 5.0 5.8 8.2 8.3 9.1 10.5
輸送 8.8 10.4 11.0 11.0 10.1 10.9 12.0 12.4 13.0 13.4
一般 10.2 10.4 10.8 11.7 10.9 12.3 12.8 12.2 13.8 13.5

 ここでも、合計の推移を図示し、さらにトレンドを回帰分析によって推計してみよう。
有給休暇取得日数の増加傾向がはっきりと読み取れる。

図6 平均有給休暇取得日数(実績値)-合計
平均有給休暇取得日数(実績値)-合計

注)トレンドの係数のt値は9.563である。

6-4.年間所定外労働時間

 最後に年間所定外労働時間数(実績値)の推移を表32でみよう。ここでも2019年が画期であって、年間所定外労働時間が大きく減っていることがわかる。2021年、2022年とやや増えているが、2018年以前と比べると、50時間以上少ないことには変わらない。この点は部門にかかわらずあてはまる。ただ、輸送の年間所定外労働時間が他部門に比してかなり多い。

表32 年間所定外労働時間数(実績値)
部門名 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
全体 231 253 250 266.6 269.7 266.0 234.8 175.6 197.2 198.6
メーカー 256 303 271 266.8 283.8 287.9 264.2 197.3 225.7 241.2
車体・部品 265 313 311 321.9 325.7 330.5 283.0 201.4 235.6 224.1
販売 193 202 193 183.9 210.3 209.8 198.2 145.2 159.2 168.6
輸送 462 435 467 463.2 596.3 597.0 425.5 447.9 367.7 369.2
一般 238 279 284 281.1 284.9 272.1 232.4 213.6 242.4 233.5

 ここでも合計の推移を図示し、さらにトレンドを回帰分析によって推計してみよう。

図7 年間所定外労働時間数(実績値)-合計
年間所定外労働時間数(実績値)-合計

注)トレンドの係数のt値は-2.323である。

 この10年間で、所定外労働時間数は減少傾向にあるといってもよいだろう。

6-5.要約

 以上、自動車総連が行っている労働時間に関する調査結果を利用して、自動車産業におけるこの10年間の労働時間の推移をみてきた。わかった点は次のようである。
 年間総実労働時間は2019年を画期として大きく減り始めた。50時間あるいはそれ以上、年間総実労働時間が減っている。部門別にみても同じことがあてはまるが、ただ、輸送の年間総実労働時間は他部門に比べて、依然として100時間以上多い。
 この減少は次の変化がもたらした。第1に、有給休暇取得日数はこの10年間、増加トレンドにあったが、2019年を境に一挙に増えた。7、8日から11、12日になった。有給休暇取得日数の増加は、部門にかかわらず、あてはまる。とりわけメーカーでの取得日数は多い。これに対し販売部門の取得日数は他部門と比べて、依然として少なく、合計と比べると2日、3日少ない。第2に、年間所定外労働時間が減った。2019年が画期であって、年間所定外労働時間が40時間超減った。この10年間で50時間以上減っている。所定外労働時間の減少は部門にかかわらずあてはまるが、ただ、輸送の年間所定外労働時間は他部門に比して依然としてかなり多い。
 自動車総連で留意すべきは、電機連合とは違った意味で、年間休日数への取組である。年間休日数は、この10年間で変化はみられない。とりわけ、メーカー、車体・部品でそうである。わずかに販売がやや増加しているようにみえる。2022年時点で、合計が114.3日、メーカー121.0日、車体・部品119.9日、販売109.0日、輸送113.4日、一般117.6日であり、2023年のJAMの規模計119.8日、300人以上123.0日、電機連合の6年間(2018年から2023年)の124日から126日に比べると、年間休日数は少ない。
 メーカーの労働協約の分析から、週休日あるいは祝日の中から1日から5日分が消えてしまっていることが推測できた。他の部門では消えてしまった週休日や祝日はそれ以上となろう。

(1) 2023年度を例にとると、祝日となるのは、日曜日(99.7%)、土曜日(祝日のある週の土曜日も含める)(88.5%)、国民の祝日(94.8%)、祝日法による休日(祝日である日曜日の振り替え、92.1%)、メーデー(78.5%)となる。比率からみても、また、メーデーの休日化を獲得している組合は、他の4種類の休日も獲得していると想定でき、したがって、「完全週休2日制」を採用しているのではないかと推測できる。
(2) 電機連合に「125日以上」と「120-124日」の比率が逆ではないかと問い合わせたが、確認できなかった。回答組合が毎年異なること、振り替えにならない祝日があるかどうか、組合によって協定期間が異なり、土日の数が変わってくること(協定日が4月1日か1月1日か)などのために、年間休日数の変動が生じ、それが影響を及ぼしているのではないかとの推定を提示された。

私の主張一覧に戻る

圭介教授の談話室